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手をふれてしまえば



陽ざしのゆるやかに舞い降りる午後の窓辺で
僕たちは椅子に腰かけて向かい合い
とりとめもない会話を いつまでも続けていました
窓の外には遠く広がる住宅街が広がり
電線の隙間を春の強い風が抜けていきました
躊躇いがちに話すあなたの声は
外からの音の遮断された部屋の中に
静かに広がっていました
僕はあなたに焦がれ
あなたは僕を慕い
そんな時間が いつしか流れ始め
もう 何年もが過ぎて
手をふれてしまえば
何もかもが崩れていってしまうから
ただ季節が流れるままに
こみ上げる思いをやり過ごしてまいりました

窓の外では送電線が
激しく身を震わせていたのですが
その声は聞こえてきませんでした

二〇一五年 三月 二二日〜二三日 奥主 榮




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